背景と目的:近年、レチノイドによる免疫調節作用が注目されている。今回、核内受容体の一種であるレチノイン酸受容体α、β、γを活性化するレチノイドであるall trans retinoic acid (ATRA)を用いてベーチェット病などの難治性ぶどう膜網膜炎の動物モデルとして知られる実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)を用いてATRAの炎症抑制効果について検討した。 方法:C57BL/6マウスにヒトIRBPペプチドを皮下接種しEAUを誘導した。免疫日からATRA(0.2mg/マウス)および基剤の腹腔内投与を開始(EAU誘導期)、免疫後21日目まで隔日投与を行った。免疫後15日目から眼底検査を行い、両群のEAUの程度を評価した。また免疫後21日目に眼球を摘出し、病理組織学的に検索した。さらに所属リンパ節細胞を採取し、抗原刺激によるサイトカイン産生能、リンパ球像増殖反応について検討を行った。 結果:ATRA投与群では基剤投与群に比較してEAUスコアの有意な低下がみられた。リンパ節細胞培養上清中のIFN-γ、IL-17はAm80投与群で有意に低下、またリンパ球増殖反応も抑制されていた。またEAUを誘導したマウスからリンパ節細胞を採取し、IRBPペプチドで刺激培養時ATRAを添加するとCD4陽性丁細胞上のIL-6受容体陽性細胞数が減少した。そこで網膜抗原特異的T細胞の誘導後にATRAを投与(EAUの発症期のみの投与)してEAUの軽症化がみられるか検討した。しかしATRAを投与を行ってもEAUの抑制効果は認められなかった。 結論:EAUの誘導期にATRAを投与することによりEAUの軽症化が誘導された。レチノイン酸受容体がぶどう膜網膜炎の治療標的分子となる可能性が示唆された。
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