まずSema3A阻害薬のマウス角膜移植モデルに対する神経再生促進効果を明らかにするため、角膜移植後、結膜下注射にて2日毎にSema3A阻害薬を投与し、対照群と比較した。再生神経の機能評価として角膜知覚を測定し、さらに、術後3週程度で摘出した角膜移植片の再生神経長を定量し、Sema3A阻害薬非投与群と比較した。移植片内の神経長の定量は、蛍光顕微鏡で撮影した像を用い、画像処理ソフト上で神経線維をマニュアルトレースし、トレースラインのピクセル数で比較した。また、Sema3AのレセプターであるNeuropilin-1(NP-1)は、VEGFのレセプターでもあることが知られているが、NP-1に対し、Sema3AとVEGFが競合的に働いているとすれば、Sema3A阻害薬により血管新生が亢進する可能性がある。角膜新生血管は、角膜が混濁する原因となるため、移植片内への新生血管を定量し、評価した。これは、CD31により描出された移植片内新生血管を画像ソフト上で解析し、Sema3A阻害薬投与群と対照群で比較した。結果として、マウス角膜移植モデルにおいて、Sema3A阻害薬投与群では、対照群と比較して、有意に移植片内への神経再生が促進されていた。Sema3A阻害薬投与群では、角膜知覚も改善されており、神経の機能が回復していることが明らかとなった。一方角膜内への血管新生は、Sema3A阻害薬を投与しても亢進していないことが認められた。これらから、Sema3A阻害薬を投与することで、角膜移植片への神経再生を促進することができたが、角膜でのSema3Aの生理作用や、Sema3A阻害薬を用いても血管新生が亢進しないメカニズムの解明など、次年度ではより詳細な検討が必要であると思われた。
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