我々は、カロリー制限が加齢に伴う生理機能の低下を抑制することが他科領域で確認されていることに注目し、これら眼科領域における加齢性変化と涙液機能の低下をカロリー制限で抑制できるのではないかと考えた。そこで、加齢に伴い増加するドライアイにおいて、カロリー制限における涙液分泌能維持機構をラットモデルを用いて証明しそのメカニズムを解明することを目的とした実験を計画した。初年度の本年は、Fischer344 Ratのオスを24週齢からカロリー制限開始とし、コントロールは自由摂取とし、カロリー制限群はカロリー制限食(-30%)で飼育した。若齢群の比較対象として8週齢のラットを用いた。飼育期間は6ヶ月とし、期間中涙液分泌能および角膜上皮障害の経時的変化を追ったところ、飼育群では若齢群と比べて涙液分泌量が減少していることが確認でき、さらに、カロリー制限群では自由摂取群と比較して、涙液分泌量が有意に保持されていることが明らかになった。またフルオレセイン染色による角膜上皮障害の程度(スコア)もカロリー制限群で有意に低く抑えられていることが明らかになった。さらに、涙腺の組織染色を施行したところ、マロリー染色では、カロリー制限群では線維化の程度がコントロール群と比較して軽度であること、ヘマトキシリンエオジン染色では炎症細胞の浸潤がカロリー制限群で軽微であることがわかった。これらのように、加齢に伴う涙腺の生理機能の低下をカロリー制限によって抑制できることを明らかにした。
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