羊膜由来神経幹細胞は、神経前駆細胞、SP細胞(幹細胞)の分離に成功している。 BALB/cマウス、重症免疫不全マウスの網膜下へのヒト羊膜由来神経前駆細胞の移植において、重症免疫不全マウスの網膜下ではヒト羊膜由来神経幹細胞は神経幹細胞マーカーを発現しており、6ヶ月以上網膜下に生着していることが確認され、それらの細胞の一部が、ロドプシン等の視細胞マーカーを発現することを確認できた。一方、BALB/cマウスに移植したものは拒絶されており、マウスへの異種移植を成功させるためには免疫抑制が必要であることがわかった。 ヒト由来SP細胞(幹細胞)は、in vitroでは炎症性サイトカインの暴露により、MHCクラスI、クラスII共に発現することがわかったが、発現は可逆的であった。一方、in vivoでの、SP細胞のC57BL/6マウス網膜下移植では、正常免疫で4週は生着し、移植細胞はMHC抗原を発現しなかった。このことからSP細胞は異種綱膜下移植においては免疫抑制を要しないことがわかった。これは、臨床応用において、患者への重大な負担となる免疫抑制剤投与を要しない可能性を示唆する重要な結果である。 また、網膜変性モデルマウス網膜下移植では、6カ月にわたり生着し、視細胞マーカー、特に視力と明所視に関わる錐体細胞のマーカーであるオプシンを発現していたことがわかった。ヒトの網膜変性の再生医療にとって非常に有用な結果である。 網膜電図を用いた機能解析では、網膜変性モデルマウスにSP細胞を移植後、6か月で網膜機能の改善がみられた個体が確認され、移植により網膜機能を回復できる可能性を示唆する結果を得た。 量的にも倫理的にも入手しやすく、臨床応用しやすいヒト羊膜を由来とする神経幹細胞を用いて、免疫抑制せずに移植により網膜の機能的な再生ができる可能性を示唆するこれらの結果は、再生医学においてその意義は大きい。
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