研究概要 |
緑内障は、視神経の萎縮によって視野欠損を生じ、重度の場合には失明にいたる疾患である。我々は、静的視野検査を施行し、緑内障と診断された症例17例(男性10例、女性7例、平均年齢61.6±14.5歳)について、頭部MRI撮影(拡散強調画像)およびポジトロン断層法(PET)と^<18>F-フルオロデオキシグルコース(FDG)を用いた安静時脳糖代謝の測定を行った。また、正常対照群7例(男性4例、女性3例、平均年齢53.9±23.0歳)についても同様の測定を行った。拡散強調MRI画像には、左右の視放線に前方・後方部位に分けて関心領域を設定し、Mann-Whitney U検定にて信号強度の差について検定した。また、PET画像は、画像解析ソフトstatistical parametric mapping (SPM) softwareを用いて標準化および統計処理を行った。 拡散強調画像における視放線の信号強度は、緑内障患者群において、正常群と比較し両側の視放線の前方・後方部位とも有意な信号強度の差がみられた(右前方:P<0.005,右後方:P<0.05,左前方:P<0.05,左後方:P<0.01)。PET画像解析では、緑内障患者群において、正常群と比較し両側一次視覚野の糖代謝低下がみられた。 これらの結果から、緑内障患者では、視神経萎縮だけでなく視放線の萎縮も存在し、それに伴って、一次視覚野の糖代謝低下が起こっていると推測された。この研究から、緑内障は、視神経だけでなく脳内にも変化をきたす疾患であることが示唆され、緑内障の病態解明に寄与すると期待される。
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