研究概要 |
緑内障患者の脳における器質的・機能的変化を調べることがこの研究の目的である。本年度は、正常人7例、緑内障症例12例に対し、MRI(3DT1強調画像および拡散強調画像)撮影(1.5Tesla scanner Signa Excite (General Electric, Milwaukee))と^<15>F-fluorodeoxy-glucose(FDG)を用いたPET撮影(SET 2400W whole-body scanner(Shimadzu, Kyoto, Japan))を施行し、前年度とあわせ、正常人14例と緑内障症例27例のMRI撮影とPET撮影を施行した。また、静的量的視野検査を施行し、視野変化を評価した。MR画像については、全症例の拡散強調MR画像の視放線上に関心領域(ROI)を設定してfraction anisotropy(FA)値を求め、得られた値をt検定を用いて患者群と正常群を比較した。PET画像については、画像解析ソフト(SPM8)を用いて標準化した後、患者群の脳糖代謝分布を正常群のものと比較した。 拡散強調MR画像の解析では、緑内障患者群では、両側のFA値が有意に低下していることが認められた。PET解析において、緑内障患者群では、両側の一次視覚野の糖代謝低下を認めたが、視覚連合野など他の部位の糖代謝変化はみられなかった。 これらの結果から、緑内障患者では、視神経萎縮だけでなく視放線の萎縮も存在し、それに伴って、一次視覚野の糖代謝低下が起こっていると推測された。この研究から、緑内障は、視神経だけでなく脳内にも変化をきたす疾患であることが示唆され、緑内障の病態解明に寄与すると期待される。
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