研究概要 |
本研究では多発性硬化症(MS)の疾患モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の作製にあたりmyelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)ペプチドを用いる。MOG感作によるEAEは強い視神経脊髄炎を示すなど、日本におけるヒトMSのモデルに近いとされており、その有用性が指摘されている。我々はMSによる視神経炎の発症メカニズムを解明するため、まず神経細胞にアポトーシスを誘導するASK1遺伝子の欠損がEAEの重症度に与える影響を調べた。その結果、正常マウスのEAEよりもASK1欠損マウスのEAEの脊髄炎や視神経炎が軽減して、視機能が良好に保たれることがわかった。また新たに合成したASK1阻害剤が脊髄、視神経炎の症状緩和に有効であることを突きとめた(EMBO Molecular Medicine,2010)。以上からASK1の抑制がMS及び視神経炎の治療に有用な可能性が示された。またオリゴデントロサイトの発生に必要なOlig1遺伝子の欠損マウスでEAEを作製したところ、EAEの発症が遅れることが判明した。つまり発症初期におけるOlig1の抑制がMS及び視神経炎の治療に繋がることを示唆した(PLoS ONE,2010)。さらに抗酸化物質であるspermidineをEAEに投与したところ、視神経炎が軽症化することを見出した。Spermidineは大豆、茶葉やキノコに豊富に含まれているため、food factorによるMS及び視神経炎への治療の可能性が示された(Invest Ophthalmol Vis Sci, in press)。
|