近年、分子生物学的手法によりヒルシュスプルング病原因候補遺伝子がRetをはじめとして数多く報告されると同時に腸管神経系発生に関する分子機構は解明されつつある。一方で、有効な治療法の少ないヒルシュスプルング病類縁疾患(以下、類縁疾患)の分子生物学的解明は遅れており、その進展が新たな治療法開発の面でも期待されている。 Ncx-/-マウスは唯一の類縁疾患モデル動物であり、我々は、今までその標的遺伝子を同定し報告してきた。今後、新たな免疫組織・分子生物学的手法を用いて解析を進めることで、類縁疾患の原因解明、ひいては新たな治療法の発展に役立つことを目的とする。そこで既に同定した3つのNcx遺伝子標的候補遺伝子の内、一つをNczfと命名しノックアウトマウスを作成した。このマウスは胎児致死性であったためにヘテロマウスでの表現型を検討した。その結果、出生後に腸管神経が増殖しているのが確認された。この遺伝子に関してヒトOrtholog検索を行ったがヒトサンプルでは見つかっていない。ノックアウイマウスが胎生致死する原因を検索したが、胎生期8-9日周辺で成長がストップしており脳の発達にも影響していることがわかった。これらより標的遺伝子は末梢神経系のみならず中枢神経系の発生にも重要な働きをしていることが示唆された。
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