本研究では、横隔膜ヘルニア(CDH)疾患モデルのラット胎仔を作成し、その肺低形肺について、インスリン様成長因子(IGF-1、IGF-2)の存在下において、肺成熟が誘導されうるかについて検討を行っている。本年度は疾患モデルラットの作成、肺(組織)培養条件の検討、IGF添加環境下での組織培養、培養組織の解析を行った。 疾患(CDH)モデルラットについては、妊娠9日目のSDラット胃内にオリーブ油1ccを投与することで作成が可能であった。妊娠18日目(満期は21日目)の時点で約45%の胎仔にCDHの形成を認め、CDH陽性のラットの左肺はCDH陰性のラットのそれよりも小さく、低形成であることを確認した。摘出した左肺は、肺の分岐発生観察の条件に習って、DMEM/F-12をベースとした培養液を用い、組織を培養液表面上に置くSemi-dry環境にて培養を行った。培養条件の妥当性について確認するため、IGFを添加しない条件での組織培養について解析を行い、その妥当性を日本小児外科学会、日本周産期・新生児学会にて報告・発表した。IGF添加培養については、当施設で行った過去のマウス肺培養の研究での培養条件を中心に、IGF添加の濃度条件、培養時間を変えて解析を行っている。現時点でIGF-1 (500ng/ml)添加群、IGF-2 (500ng/ml)添加群について24時間培養条件でI型肺胞上皮細胞のマーカーであるICAM-1のmRNAの増加傾向を認めており、肺成熟の可能性が示唆された。病理学的解析を含め、IGF投与の有効性について検索していく方針である。
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