【目的】小児悪性腫瘍の中において、比較的頻度の高い神経芽腫、Wilms腫瘍や肝芽腫に対してSNP-arrayを用いて、全染色体レベルで遺伝子の増幅、欠失を一度に網羅的に検索し、遺伝子・染色体異常に基づいてそれらを分類し予後などの臨床情報と比較することで、小児固形腫瘍の正確な悪性度の層別化、及びテーラーメード型治療の導入を行うことを研究目標とした。 【方法】昨年も報告したように、当科で治療を行った神経芽腫・肝芽腫・Wilms腫瘍の凍結検体からDNAを抽出。現在まで、神経芽腫約200検体、wilms腫瘍約20検体の凍結検体からDNAを抽出済みである。約50検体の神経芽腫については、抽出したDNAに対して、Iluman CMV370-Duo (Illumina)を用いて網羅的全遺伝子解析を行った。現在、Wilms腫瘍約20症例に対して、同様にSNP array解析を終了した。 【現在までの結果】神経芽腫50検体に対して現在まで、神経芽腫の最も強力な予後因子であるMYCN遺伝子の存在する2p領域について詳細な解析を行った。50例の解析によると、7例にMYCN遺伝子領域のみの高度増幅(MYCN増幅)のみ、2例にMYCN増幅と2p gainの合併、9例に2p gainのみを認め、残りの32例にはMYCN増幅及び2p gainを認めなかった。SNP arrayにおいて2p gainのみ認めた9例の5年生存率は66%で、2pの変化のなかった32例の93%と比較して有意に予後不良であった。しかし、2p gainの症例は11q lossのような他の染色体変化を合併する率が、2p gainのない症例に比べて有意に高かった。 以上の結果を得ている。Wilms腫瘍についても、様々な染色体・遺伝子の異常を認めている。 【今後について】Wilms腫瘍についての結果の解析を進めていく。
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