研究概要 |
研究2年目となる平成22年度は、実験動物を用いた実験を中心に行った。間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell、以下MSC)と各胎生期のマウス腸管組織及び成体マウス腸管組織片との共培養、成体マウスへのMSCの経静脈的投与(部分骨髄移植)、各種条件設定下でのMSCの分化誘導実験などを行った。 その中で、体細胞が全てGreen Fluorescent Protein(以下GFP)陽性のEGFPマウスの骨髄より採取したMSCを、2~3週間浮遊培養してsphere形成後、W/Wvマウス(カハール細胞が極端に減少しているモデルマウス)の成体マウス腸管組織片と共培養した実験系では、約1週間の共培養後、固定・染色して共焦点顕微鏡にて観察した。その際分化の評価としてはカハール細胞(Interstitial cells of Cajal,以下ICC)に特異性の高いAIC抗体による免疫染色を用いた。観察結果では、GFP陽性細胞が腸管組織片内に経時的に移動し、その多くがICCマーカーのAICと共陽性を示した。また、それらの細胞の光学顕微鏡的形態は複数の突起構造を有する類円形~紡錘形の細胞体として観察された。 この結果は共培養したMSCがICCへと分化した可能性を含んでいるが、ICCへの分化を示すには、より一般性の高いICCマーカーであるACK2抗体との共陽性や、組織内への侵入及び共陽性細胞の定量的な解析、さらにはICCの機能的特徴としての電気生理学的な特性などを確認・証明することが必要と思われ、ひき続き23年度はそれらを中心に実験を進めていく予定である。
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