前年平成22年度に、EGFPマウス(体細胞が全てGreen Fluorescent Protein(以下GFP)陽性のマウスで、GFP陽性により移植された細胞を判別可能である)骨髄より採取した間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell、以下MSC)でsphere形成後、W/W^Vマウス(カハール細胞が極端に減少したモデルマウス)腸管組織片と共培養したところ、MSCが腸管組織内に経時的に移動しAIC抗体(カハール細胞に特異性の高いマーカー)陽性を示した、という結果を得られていた。そこで本年度はまず同様の共培養を野生型マウス腸管組織片とも行った。すると腸管組織内に進入しAIC陽性を示す、MSC由来細胞が認められた。しかしそのAIC陽性率及び組織内進入距離には、W/W^Vマウスとの共培養時と比べ優位に少ないということが、定量的な解析より確かめられた。sphereから組織内に進入した細胞の電子顕微鏡学的観察を行ったところ、細胞質にミトコンドリアを多く含む等のカハール細胞の特徴に矛盾しない構造的特徴を備えていることも確認された。 また、EGFPマウス骨髄より採取したMSCを、sphere形成を経ずにそのまま経静脈的にW/W^Vマウスに移植することで、数ヶ月後に腸管内にカハール細胞の形態学的特徴に合致するMSC由来細胞が認められた。同様のことが野生型マウスレシピエントについても証明された。 これらの結果から、共培養と骨髄移植という異なる2つの実験系において、移植したMSCから、カハール細胞の形態学的特徴に合致した細胞に分化させることに成功した。実験開始時に立てた研究目的の主要部分を達成できたため、これまでの結果を国際学会で発表し、論文作成を開始した。現在投稿準備中である。
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