培養毛乳頭細胞を移植することで再生毛包を得るというコンセプトで、動物実験からヒトへの応用を目的として実験を行っている。培養細胞を用いた毛髪再生は3つのステップを必要とする。まず細胞培養の最適化である。これは安全性を確保して効率よく増殖させることが目標となるが、成分の不明な特殊な培地を用いずとも、標準的な培地にGrowth factorであるbFGFとPDGFを添加することで、効率よく細胞を増殖させることができることがわかった。また、細胞増殖を促すと毛包誘導能の指標であるアルカリフォスファターゼ活性は低下するが、コンフルエントになった細胞にVitamin Dを加えるとアルカリフォスファターゼ活性を上昇させることができることを確認した。次に移植法の最適化であるが、ケラチノサイトを用いずともラット成獣培養毛乳頭細胞をラット足底無毛部に移植して発毛させるモデルを確立し、データを整理して現在論文投稿中である。このモデルを用いてまず、培養ヒト毛乳頭細胞をヌードラットの足底に移植を試みた。ところが、切片を評価してみるとヌードラットとヒトの相性が良くないためか表皮-真皮間の相互作用がうまく生じていないことがわかった。現在、ヒトの表皮をあらかじめヌードマウスに移植しておき、その皮下に培養ヒト毛乳頭細胞を移植することなどを検討中である。最後に移植体の最適化であるが、どのような形、細胞数、前投薬などで移植するのが、より優れた数や質の毛包を誘導するのかというのは非常に重要な項目である。最近SphereをVitroで形成することによって毛髪が誘導されることがわかってきた。Sphereを移植体として用いることでより毛包誘導効率を上げることができる可能性が示唆された。また、前投薬として注目しているビタミンDの作用についてもVDRを介してシグナル伝達が細胞内になされ、再生毛包の質を高める可能性のある実験結果がでてきている。
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