乳癌に対する乳房部分切除術後欠損部位に充填する目的で、脂肪組織再生について研究を行っている。 組織再生には(1)細胞源、(2)足場、(3)増殖因子、が必要とされる。我々は以前にヌードマウス皮下に、(1)細胞源としてヒト脂肪組織由来幹細胞、(2)足場にタイプIコラーゲンスポンジを、(3)増殖因子にFGF2を用い、脂肪組織再生を確認した。再生脂肪組織はヒト由来のものとマウス由来のものとが混在していた。 今回、中動物であるウサギを用いて脂肪組織再生を試みている。 3kg雌のNew Zealand White Rabbitを全身麻酔下に、両鼠径部に存在するfat pad内に、非吸収性のポリプロピレンメッシュで作成した直径2cm、高さ1cmの円柱状のケージを移植してスペースを作り、その内部に細切したタイプIコラーゲンスポンジ(ペルナック^<TM>)を生理食塩水に懸濁して16G静脈内留置針を用いて注入した。 移植後1週間、1か月、3か月、6か月、12か月のポイントで超音波検査を行い、移植したケージ内部の観察を行った。移植後1か月までは液体成分が多くみられたが、移植後3か月頃から内部に充実性組織を認めるようになった。 移植後12か月でケージを摘出し(n=4)、HE染色を行った結果、ポリプロピレンメッシュケージ内部のほぼ全体にわたって(断面積にして約2cm2)、成熟脂肪組織が再生していた。一部に線維組織も認めた。 今回、スペースを確保した上で、組織再生に必要とされる3因子のうち足場のみを移植した場合でも脂肪組織再生を確認した。 スペースを確保し、適切な足場を移植することにより、細胞源、増殖因子は周囲の組織からリクルートされるのではないか、と推測する。 臨床応用を考慮するにあたり、シンプルな方法により再生脂肪組織を得られることは有意義と考える。
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