研究概要 |
ケロイド病変部に蓄積しているグリコサミノグリカン(以下GAG)の種類と組織内における局在について、実験を行った。インフォームドコンセント後、手術を受けた患者より得たケロイド組織4例、正常皮膚組織2例を用いた。切除組織を4%パラフォルムアルデヒドで固定後、パラフィン包埋し作製したパラフィン切片に対して、各種GAG分解酵素(コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼAC、デルマタナーゼ、ヒアルロニダーゼ)処理を行ったものと、酵素処理を行わない切片に対して、アルシアンブルー染色(pH2.5)を行った。其の結果、正常皮膚に比較し、ケロイド組織切片は、病変部に一致して、アルシアンブルーによる濃染を認めた。この濃染は、コンドロイチナーゼABC、AC、デルマタナーゼ、ヒアルロニダーゼのいずれによっても退色し、その退色の程度は、コンドロイチナーゼABC>コンドロイチナーゼAC≧デルマタナーゼ>ヒアルロニダーゼの順であった。このことより、ケロイド組織には、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸が存在し、特にコンドロイチン硫酸が大量に存在することが推測された。ビオチン化ヒアルロン酸結合蛋白(生化学工業#400763)による染色を行ったところ、ケロイド組織の表皮、及び病変部内におけるヒアリン化した異常コラーゲン束周囲が染色された。抗ケラタン硫酸抗体(生化学工業#27042)による免疫組織化学染色では染色性を確認できなかった。また、GAGは、硫酸基の位置や、硫酸化の程度により生理活性が異なることが知られているため、同切片を、コンドロイチナーゼABc処理後、抗ΔDi-4S抗体(生化学工業#270432)とΔDi-6S抗体(生化学工業#270433)で染色したところ、両者とも、病変部に染色性を認め、特に、正常皮膚との境界部分に強く染色性を認めた。以上より、ケロイドにはコンドロイチン硫酸が多量に存在し、コンドロイチン硫酸A,Cとも、コラーゲン束周囲および病変部辺縁に蓄積していることが判明した。
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