本研究の目的は、ガラス化法を用いて皮層の長期乾燥保存および凍結保存の実現である。平成21年度に行った研究の成果を報告する。 (1) 乾燥保存したヒト皮膚の、透過型電子顕微鏡による観察 ヒト皮膚をトレハロースを含む保存液に浸漬した後乾燥させ、3ヶ月間乾燥保存した。透過型電子顕微鏡で細胞構造を観察した。コントロール群と比較したところ、保存液を用いた群は、ミトコンドリアなど細胞内小器官の構造が保たれていた。 この結果より、トレハロースが乾燥保存の実現への鍵と考え、動物実験で実際に移植実験を行うことにした。 (2) ラットでの皮膚移植実験 Green florescence protein-transgenicラット(GFP-LEWラット)を用いて皮膚移植を行った。GFP-LEWラットから皮膚を採取し、保存液に浸漬した後に2ヶ月間常温乾燥保存した。加水した後、近交系LEWラットの皮下に埋め込み移植した。移植から1ヶ月後に移植皮膚を摘出し蛍光顕微鏡で観察したが、発光はわずかであった。組織学的検査でも生着しているとは言い難い結果であった。 以上のように、本研究の目的を達成するにはまだ手法の改良が必要である。目的達成における最も重要なポイントは、細胞内にトレハロースをいかに取り込ませるかであると考えられる。今後は類似の研究を参考にし、短時間加温処理によるエンドサイトーシス促進、抗酸化物質の併用などを試みる予定である。
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