本研究の目的は、ガラス化法を用いた皮膚の長期乾燥保存および凍結保存を実現し、スキンバンクの拡充を図ることである。平成22年度に行った研究の成果を報告する。 前年度に行ったラットでの皮膚移植実験の結果を踏まえ、保存液のトレハロース濃度がポイントの一つであると判断した。最適な濃度を模索するため、乾燥保存したヒト皮膚の透過型電子顕微鏡による観察を再度行った。ヒト皮膚を保存液に浸漬した後乾燥させ、3ヶ月間乾燥保存し、透過型電子顕微鏡で細胞構造を観察した。その結果、トレハロース濃度が1mol/Lの保存液を使用した際にミトコンドリアなど細胞内小器官の構造が保たれていた。この保存液を使用して、前年度に行った皮膚移植実験を再度行った。 Green florescence protein-transgenicラット(GFP-LEWラット)の皮膚を採取し、保存液に浸漬した後に1ヶ月間常温乾燥保存した。加水した後、別のラットの皮下に埋め込み移植した。移植から1ヶ月後に移植した皮膚を摘出し蛍光顕微鏡で観察した。発光は若干強くなったが、組織学的検査では生着しているとは言い難い結果であった。 本研究の目的を達成するには更なる手法の改良が必要である。最も重要なポイントは、細胞内にトレハロースをいかに取り込ませるかであると考えられる。平成23年度は、短時間加温処理によるエンドサイトーシス促進、抗酸化物質の併用などを試みる予定である。
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