ケロイド手術症例を局所再発群と非再発群にわけ、それぞれの群の組織で、特殊染色や各種炎症細胞に対する抗体を用いた免疫染色を施行した。各種炎症細胞の細胞数や組織内分布を検索し、局所再発群と非再発群における組織学的な差を検討した。陽性細胞数の計測方法として、各種染色後、各組織で線維芽細胞の増殖し膠原線維の増加している病変の中心部分を中心部とし、病変と非病変部との境界の真皮網状層を辺縁部として、各領域に含まれる細胞数を光学顕微鏡で直接計測した。局所再発群では、非再発群と比較し、辺縁部においてリンパ球及び組織球等の炎症細胞の増加傾向が得られた。また、両群とも中心部と比較し、辺縁部においてリンパ球及び組織球の増加傾向が得られた。また、局所再発群と非再発群を中心部で比較したが、有意な差はみられなかった。この結果から、辺縁部での炎症細胞の増加がケロイドの局所再発のメカニズムに関与していることが示唆された。22年度の研究では、検討すべき炎症細胞の種類を増やし、どのタイプの炎症細胞がケロイドの再発メカニズムに関与しているかを研究する予定である。この研究により、ケロイドの再発のメカニズムを研究することで、ケロイドの発生メカニズムについて明らかにすることができると考える。本研究はより効果的な治療法を開発するとともに、ケロイド治療薬の開発やケロイド予防のための基礎的データとなると考える。今後、ケロイドの症例数を増やしデータを増やすとともに、さらに類似疾患である肥厚性瘢痕や成熟瘢痕での検討を研究する予定である。
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