本研究では、マイクロRNAと創傷治癒機転との関連に知見を与え、当該マイクロRNAの糖尿病性創傷治癒不全における意義を考察する。殆どのマイクロRNAがマウスおよびヒトで共通であると考えられていることから、マウスを用いた実験をした。KKAYマウスを糖尿病性創傷治癒モデルとして用いてマイクロRNAの発現を検討した。PCR arrayにより、細胞分化と発生に関与する88種類のマイクロRNAの発現を正常マウス皮膚と比較した。88種類の内14種類マイクロRNAがKKAYマウス皮膚で10倍以上亢進されていた。次、正常マウス皮膚とKKAYマウス皮膚に創傷を作製し、経時的に(0日後、4日後および8日後)創傷周辺組織を採取した。創傷を作製していない正常マウス皮膚をコントロールとして用いて、マイクロRNAの発現を解析した。PCR array法により、糖尿病性創傷治癒の各時期において発現が亢進あるいは抑制されているマイクロRNAが判別された。様々なマイクロRNAの発現が亢進あるいは抑制された。それらの内miR-21発現が特異であった。miR-21の発現はKKAYマウス皮膚で15倍以上増加していたが、創傷治癒時期正常創傷より25倍以上減少していた。次の実験はmiR-21に注目しておこなった。miR-21による線維芽細胞増殖能、ケラチン細胞増殖能、線維芽細胞遊走能、ケラチン細胞遊走能への影響を検討した。正常マウスあるいはKKAYマウスの創傷組織から単離した線維芽細胞、ケラチン細胞等を用いて実験をした。結果、miR-21は線維芽細胞増殖能、ケラチン細胞増殖能に関与しなかったが、線維芽細胞遊走能、ケラチン細胞遊走能に関与した。今後、miR-21による糖尿病性創傷治癒に与える影響を詳しく検討する予定である。
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