研究概要 |
本研究では、我々が高度に純化することに成功した成体マウス骨髄間葉系幹細胞(MSCs)を用いて誘導多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells : iPS細胞)を樹立することにより、成体マウスから高品質なiPS細胞を高効率かつ安全性の高い手法で樹立することを目的とした。 成体MSCsと成体tail tip fibroblast (TTF)、osteo-progenitor (OP)について、レトロウイルスを用いた従来法(Takahashi et al., Cell, 2006)と同様にOct3/4、Sox2、Kfl4、c-Mycの4因子およびc-Mycを除いた3因子を導入してiPS細胞を樹立した。その結果、MSCs由来のiPS細胞コロニーが高頻度(約0.5-1.0%)に出現した。この結果はTTF、OPからの樹立効率およびこれまでに報告されているTTFを用いた樹立効率(0.02-0.05%)より明らかに高く、MSCsはiPS細胞樹立における細胞源として優れていることが示唆された。さらに、MSCs由来のiPS細胞からキメラマウスを作製したところ、興味深いことに4因子を導入したiPS細胞より3因子を導入したもの方がキメラマウスへの寄与率が高く、germline transmissionも高頻度に確認された。本研究において、成体MSCsがより少ない因子で生殖細胞に分化できるほど初期化され得る優れた細胞源であることが示された。本年度は上記結果をPLoS One誌に投稿するとともに、より安全性を高めるため、ゲノムに外来遺伝子の挿入が起こらないセンダイウイルスを用いてのiPS細胞樹立に成功した。当研究室ではヒト細胞においても、FACSを用いてのMSCs濃縮に成功しているため、本研究はヒトMSCsを細胞供給源とした高品質なiPS細胞作製のベースとなり、臨床応用において患者の年齢によらず効率よく高品質なiPS細胞株を樹立することが可能になると考えられる。
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