近年、さまざまな組織において組織幹細胞が分離され、その細胞を用いた細胞移植治療が試みられているが、この実現には、再生現象に関わる増殖能・分化能の高い幹細胞の生物医学的研究が重要であり、さらには細胞に生体組織の再生を誘導する手法も不可欠である。本研究では、組織幹細胞の中でも分化能が高く、さまざまな分野で研究されている間葉系幹細胞を用いて、体内での遊走制御機構を解明し、早期に医療への応用を実現可能な技術を確立する。 本年度は、フローサイトメーターにて分離したヒト間葉系幹細胞を、NOGマウスの眼下静脈叢より移植し、その生着率・動態を調べた。移植後3ヶ月では、NOGマウス中のヒト細胞の割合が10-30%確認された。一方。従来行われている培養による間葉系幹細胞の分離方法では、間葉系幹細胞は肺の静脈にトラップされてしまい、骨髄にhomingする割合が極めて低かった。6ヶ月後、NOGマウス中のヒト細胞の割合はさほど変化はなかったが、末梢血やその他の臓器における間葉系幹細胞の割合は低いことがわかった。続いて、生着したヒト間葉系幹細胞を末梢に動員させるようなアッセイ系の確立を行った。現在、レポーター遺伝子を組み込んだ間葉系幹細胞を用いてG-CSFなどの投与を行い、体内での遊走機構の解明を行なっている。本研究により、In vivoでの間葉系幹細胞の遊走、動態を知る上でのデータの一つになったと考えられる。間葉系幹細胞は、ヘテロな集団でin vivoの動態解析は不可能であったが、申請者の開発した分離技術により、ピュアな幹細胞そのものを解析することができ、イメージング技術により幹細胞と創傷治癒のより深い理解を得ることが可能となる。
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