本研究の目的は、痺痛に関与するマイクロRNAのターゲットになる遺伝子の候補を見出しどのような役割を担っているかを確認し創薬につながる可能性を模索することである。 疼痛モデルとしてラット脊髄挫滅モデルを使用した。オスの6週のSDラットに錘を5cmの高さから落下させて受傷させた。2週間後に麻痺から回復した後、von Frey Filamentを用いてallodyniaが生じることを行動学的に確認した。麻痺から回復した術後2週間後で痙痛行動を確認した脊髄サンプルについて核小体低分子RNAの1種であるRBII-52の定量を行った。核小体低分子RNAは、セロトニン2C受容体の塩基配列に相同性を持つ52塩基の分子で、セロトニン2C受容体の選択的スプライシングに関与するといわれている。選択的スプライシングが起こると受容体としては機能持たない形状へ変化してしまう。脊髄サンプルのRBII-52の定量を行った結果、障害より尾側で変化を認めた。RBII-52に関与するセロトニン2C受容体について疾痛効果を検証した。また、セロトニンと脊髄下行性疼痛抑制系において密接に関係しているアドレナリンについても検証を行った。疼痛モデルである三叉神経絞扼モデルにおいてセロトニン2C受容体およびアルファアドレナリン受容体作動薬で疼痛行動を抑制する効果があることを明らかにした。 今後RBII-52に関与するRNAを核内に運搬する手段を確立すれば、受容体機能を変化させる選択的スプライシングを調整することが可能となり、RBII-52が疾痛に対する新たな治療薬になりうるため大変意義深いと考えられる。
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