難治性致死性不整脈治療の現状は、特に急性期においては不整脈を押さえ込むようないわゆるdown-stream治療のみだが、長期予後の改善を目指し平行した心筋保護のための強力なup-stream治療の開発が必要である。一方で、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の血管新生によらない、心筋リモデリングおよびアポトーシスの両方の抑制効果が示された論文が報告されている。申請者は新たな難治性致死性不整脈に対するupstream治療薬の開発を目的とし、モデル動物を用いた実験系でG-CSFによる治療効果を検討した。本年度は昨年度作成したDah1ラットを用いて、心臓内電極からの直接刺激による心室頻拍誘発モデルを用いて、G-CSFの心室頻拍の抑制効果を確認した。食塩負荷による高血圧モデルとコントロールを比較検討することで、G-CSFの投与効果を調べるとともに、そのメカニズムの解明を試みた。生化学的、分子生物学的な検討では、コネキシン43のリン酸化が関与していることが示唆され、高血圧が進行し基質化した病変よりも電気的なリモデリングレベルでの効果が期待できる内容であった。2011年の日本集中治療学会、日本循環器学会、アメリカ不整脈学会、ヨーロッパ心臓学会に演題が採択されており、情報収集を行った後に論文作成の予定である。
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