致死性不整脈である心室性頻脈性不整脈(心室頻拍、心室細動)は、急性あるいは、陳旧性心筋梗塞の合併症として周術期においても慎重な対応を要することは周知されている。また、高血圧などの基礎疾患から心筋リモデリングの進行に伴う心肥大は心室性頻拍性不整脈の独立した危険因子となり、突然死の原因となる。 一方、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は、顆粒球減少に対して使用されるサイトカイン製剤であるが、近年、心筋細胞間のギャップ結合に関与して心室性不整脈を抑制する報告がなされた。 申請者は、Dahlラットを用いて、不整脈誘発モデルを作成し、G-CSFのその予防効果を検討した。心肥大を認めた食塩負荷高血圧ラット群に対し、G-CSFの予防投与は、有意に心室性頻脈性不整脈の発生率を抑制した。さらに、分子生物学的検討では、心臓内リン酸化コネキシン43分子はG-CSF投与群において増加を認めた。 これらのことから、心肥大ラットにおいて、G-CSFはコネキシン43分子のリン酸化を介して心室電気的リモデリングの進行を抑制し、心室性不整脈の発生率を低下させることが示唆された。この結果は、心疾患周術期での致死性不整脈の抑制効果の臨床試験を行う根拠の1つとなる。
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