アディポネクチントランスジェニック(Tg)マウスはワイルドタイプ(WT)マウスと比較して、18ゲージ針による盲腸結紮穿刺による、重症敗血症の予後が改善した。穿刺一週間予後において、WTは5/30匹の生存であったが、アディポネクチンTgマウスは18/30と著名な予後の改善をみた。なお、18ゲージより生命予後の良い、20ゲージ針によるTgマウスにおいては一週間予後は21/30で、WT群は15/30であり、軽症となる、22ゲージ針による比較では、Tg群28/30、WT群24/30と敗血症が重症なほどTg群とWT群にど大きな差があることが判明した。Tg群では、血清IL-6、TNF-αが低下しており、肝臓・肺のミエルペルオキシダーゼ活性もアディポネクチンTg群では低下していた。病理組織学的検討においても、TgマウスにおいてはCD11b陽性細胞の浸潤が、肝臓・肺ともに著名に減少していた。また肺の気管支壁の炎症・肝細胞の融解も軽減していた。 これらの結果はアディポネクチンが減少している、糖尿病患者が敗血症が重篤化しやすいこと、またひとたび重症化すると治癒が難しく、予後が悪いことの裏付けとなると考えられた。また近年、重症の集中治療室に入室患者において糖尿病が存在しなくても血糖を厳重に管理することで予後が改善することとの関連も考えられ、次年度は細胞内メカニズムに関しても詳しい検討を行って行く予定である。
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