昨年度の研究において重症敗血症の予後がアディポネクチントランスジニック(Tg)マウスにおいてワイルドタイプ(WT)と比較して改善されていること、炎症が抑制されていることが示された。本年度においては、まず二つある、アディポネクチン受容体(R1、R2)が炎症性細胞においてはR1がR2より多く発現していることが示された。しかし、敗血症マウスから分離されたマクロファージにおいては両者ともに発見が減弱していたが、R1がより優位に低下していた。このため、培養単核球系細胞である、J774とTHP-1にLPSを投与し、その前後で発現を確認したところ、同様の結果が得られた。単核球系細胞の炎症においてはR1がより重要なのか、抗炎症作用を発揮するためにR2が保たれているのか来年は検討する必要がある。 また、アディポネクチンの下流にあると考えられている、AMPKの阻害剤である、compoundCによってInVitroの単核球系細胞のLPS・TNF-アルファによる炎症が抑えられたことから、AMPKを介した系が最も有力であると考えられた。さらにTNF-アルファによるTHP-1細胞の血管内皮細胞への接着もアディポネクチン投与にて抑制され、compoundCの投与にてアディポネクチンの効果が阻害された。これらに関しては最近セラミダーゼなどを介しているという報告もなされているので、このような系も検討する予定である。 これらの検討の後、アディポネクチンの発現が約半分となっているアンチセンスTgマウスを使用して今まで行った実験を行い、低アディポネクチン血症という、糖尿病の本質と同様の病態における敗血症の炎症の経路についても検証していく予定である。
|