研究概要 |
本研究は、敗血症での主要臓器における3種類の小胞体ストレスセンサータンパク質および小胞体内シャペロンBipの発現や活性を細胞レベルで明らかにし、加えてIRE1α、CHOPの2つのタンパク質が治療のターゲットとなり得るかを検討する事を目的としている。本年度は、まず盲腸結紮穿孔によるマウス敗血症モデルを作成し正常群とめ比較を行った。対象臓器としては、タンパク質合成が活発で小胞体ストレスとの関連が強いと思われる内分泌器官のうち、膵臓と副腎について検討した。膵臓では、正常マウスにおいて,3つの小胞体ストレスセンサー蛋白質であるIRE1α, PERK, ATF6や小胞体シャペロン蛋白であるBiPは,いずれも膵外分泌部よりも膵内分泌部に強く発現していた。また,小胞体ストレスで誘導されるアポトーシス誘導蛋白CHOPも膵内分泌部に強く発現していた。さらに,二重染色像ではPERKがグルカゴン分泌細胞に特に強く発現していることが観察された。一方,敗血症病態では,膵内分泌部に加えて,膵外分泌部におけるATF6, BiP, CHOPの発現が著明に増加した。形態学的評価では,膵内分泌部は敗血症による変化に乏しかったが,膵外分泌部では分泌顆粒が増加し,細胞質が著明に拡大する傾向が認められた。また副腎では、3つの小胞体ストレスセンサーたんぱく質IRE1α、PERK、ATF6とその活性化に関わる小胞体シャペロン蛋白質BiP、さらに小胞体ストレスによって誘導されるアポトーシス関連蛋白質CHOPはいずれも副腎髄質よりも副腎皮質において強く発現していた。敗血症では、これらの小胞体ストレス関連蛋白質の発現が、副腎髄質にて強く誘導された。またPERKの活性化を示すリン酸化が、ミネラルコルチコイドを主に産生する副腎皮質球状帯で、敗血症によって増加する傾向を認めた。これらの結果から、内分泌器官の中でも部位により小胞体ストレスの関与が異なり、また敗血症に対する反応も異なる事が示唆された。
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