はじめに:敗血症症例において、ステロイドホルモン分泌臓器である副腎皮質の機能と、炎症性メディエーターであるmacrophage migration inhibitory factor(MIF)との関連性を調べた。 方法:2006年から2008年にかけて当院ICUに入室した敗血症症例を対象として血液サンプルを採取した。敗血症の診断から24時間以内にACTH負荷試験を施行し、症例を負荷試験の反応性によって2群に分けた(反応不良群、正常反応群)。負荷試験の前に血液サンプルを採取した。それぞれの検体に対してコルチゾル、MIFを測定し、その関係について検討した。 結果:対象は41症例であり、反応不良群19症例、正常反応群22例であった。反応不良群では、正常群と比較して有意にMIFが高値になることが示された。血清MIF値は臓器不全スコアと有意な相関があった。ACTHを負荷した場合の血清コルチゾル値の増加分(Δmax)は、血清MIFと有意な負の相関関係があった。また、Δmaxを血清アルブミン値で除した値を遊離コルチゾル指数とすると、血清MIFは遊離コルチゾル指数とも有意な負の相関関係があった。これらのことから、血清MIFはACTH負荷試験で評価される副腎皮質機能を反映する指標になると考えられる。 考察:これまでの報告から、MIFはコルチゾルと相互に調節しあっていることが示されてきた。この結果は臨床的にもMIFとコルチゾルが相関して変動していることを示しており、副腎皮質機能や、ステロイドの必要量(不足量)を推し量る指標になる可能性がある。今後、さらに症例を重ね、基礎的な実験などを加えることによってメカニズムの解明が期待できる。
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