非侵襲的陽圧換気(NPPV)中の口腔内乾燥を軽減すべく、基礎研究ならびに臨床研究を行った。基礎研究では、モデル肺を用いて急性呼吸不全患者の呼吸状態を再現し、NPPV中の吸入ガスの絶対湿度について、加温加湿器の温度設定を中等度と最大の2つの温度設定について計測した。その結果、NPPVの吸入酸素濃度が高い場合、PEEP設定が高い場合、リークが多い場合に吸入ガスの絶対湿度が低下した。 臨床研究では、NPPV中の口腔内乾燥度について、口腔内乾燥度測定装置を用いて客観的評価を行った。NPPV装着中は、中等度の温度設定では、NPPV装着後12時間から24時間で、口腔内乾燥が増悪した。またNPPV離脱後12時間から24時間で、口腔内乾燥は正常に回復した。一方、温度設定を最大とすると、口腔内乾燥の増悪はなかった。同様の傾向が、NPPV装着患者の口腔内乾燥の自覚症状(0-10段階評価)でも示された。さらに、実際にNPPV装着患者16名でNPPVマスク内部の24時間の絶対湿度の変化と口腔内乾燥度の関連についても調査した。加温加湿器の温度設定は加湿器内部31℃、Yピース34℃で行った。その結果、マスク内部の絶対湿度は平均30mgH2O/Lであったが、同じ加温加湿器の設定においても患者間により平均絶対湿度は23-33mgH2O/Lと違いが見られた。絶対湿度はマスクからのガスリーク量と外部温度に相関がみられた。絶対湿度と口腔内乾燥度にも関連が認められた。ただし、平均の絶対湿度が30mgH2O/Lと高く維持されているにも関わらず、NPPV装着患者の50%で自覚症状が7-10と重度の口腔内乾燥を認めた。急性呼吸不全患者では、頻呼吸、口呼吸の増大、炎症反応や発熱による脱水などで、健常人と比較して口腔内乾燥を惹起しやすい。このことから、急性呼吸不全患者の口腔内乾燥を防ぐには、適切な加温加湿と同時に、口腔ケアなど他の予防策も並行することが必要と思われた。 本研究により、NPPV療法に必要な加温・加湿器の設定や予防策に関する新たな指針となるデータが供給できた。
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