血管内皮細胞を培養し、ヒスタミンによる刺激下に全血を流すことで血栓形成を観察することを目的に実験を開始した。しかし、血栓形成をフィブリン抗体標識にて確認しようとしたが十分な観察ができないため、Platlet-rich Plasmaを使用することで、内皮細胞から分泌されたUltra-large VWF(フォンウィルベランド因子)に血小板が接着していく状態を確認できた。現在、高血糖や低酸素などの様々な条件下でこの血小板血栓がどのように変動するかを観察していく予定である。 本実験の臨床的側面を補強する目的で、敗血症患者のうち血小板数12万以下または24時間以内に前値より30%以上低下した15症例における血中VWF Propeptideの濃度とVWF切断酵素である血中ADAMTS-13活性を測定した。特に血小板数が12万以下となった症例において血中VWF Propeptide濃度は非常に高値(健常成人の200~500%)を示し、血中ADAMTS-13活性は20%以下に低下していた。今後さらに症例数を増やして検討を進めていく予定である。また、敗血症患者における血管内皮細胞からのVWF Propeptideの分泌にはTNF-αやインターロイキン6などが関与していることが示唆されており、これらの症例でもこうしたサイトカインとの関連を検討し、さらに得られた知見を血管内皮細胞上での血栓形成に再現する実験モデルを確率していく予定である。
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