研究課題
敗血症の病態において、血管内皮細胞上で生じる炎症と血液凝固の関連を検討することが本研究の目的である。フローチャンバーを用いて敗血症患者の全血での観察を行うことが当初の目的であったが、まず敗血症患者における炎症と血栓形成の指標として、血管内皮細胞から放出されるフォンウィルブランド因子(VWF)のプロペプタイド(VWF-PP)の変動を観察した。対象27例の敗血症患者(重症敗血症ならびに敗血症性ショック)のVWF-PPは293.8±153.8%と正常の2から3倍まで上昇していた。血管内皮細胞からの過剰なVWFの発現は血小板血栓の形成に繋がる。このため過剰な血栓形成を制御するのがADAMTS-13であるが、対象症例のADAMTS-13の活性は血栓形成の制御のため消費され、24.9±8.5%と低下していた。これらのマーカーは単独でも生理学的重症度であるAPACHE-IIやSOFAスコアとある程度関連が認められたが、VWF-PP/ADAMTS-13の比をとさらに良好に関連することが認められた。また、VWF-PPは炎症性サイトカインのうち、腫瘍壊死因子(TNF-α)と有意に相関していることが確認できており、WF-PPとADAMTS-13を中心とする炎症と血栓形成が敗血症の病態において重要な役割を果たしていることが推測された。そこで、培養ヒト月齊帯静脈血管内皮細胞と血小板浮遊液を用いてフローチャンバーにて炎症と血栓形成の関連を動的に観察することとした。ヒスタミン刺激によるWF-PP発現をコントロールとして、TNF-α刺激を炎症病態下の血管内皮細胞障害とした実験モデルの作成を試みた。動態下での炎症と血栓形成の観察のため、血管内皮細胞を刺激するヒスタミンやTNF-αの適切な濃度、刺激時間、血小板浮遊液の流速を現在模索中である。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
日本救急医学会雑誌
巻: 22 ページ: 747-759
10.3893/jjaam.22.749