研究概要 |
重度外傷・熱傷患者は、感染症が契機となって多臓器不全で死亡することが多い。我々が開発した白血球表面抗原の網羅的解析(Immunophenotyping:IP)は、外傷・熱傷患者の免疫能の評価に有用であり、病態悪化の予知に貢献すると考えられる。熱傷・外傷患者のIPと臨床経過との関連を明らかにすることを目的として、polyethylene glycolでコーティングされたスライドガラスに、解析予定の白血球表面抗原に対する抗体(詳細は下記)をアレイ状に並べた解析キットを開発し、平成21年度は臨床患者への臨床応用と基礎的解析(IP解析:T-lymphocyte subsets CD4, CD8 ; Monocyte subsets CD36 ; Neutrophil subsets CD16b)を行った。本法による解析は、臨床患者においても迅速・簡便に施行可能であることが明らかとなった。平成22年度は、当科で集中治療を行った患者のうち、本法の解析に関する同意が得られた重度外傷・熱傷患者を対象として、より拡張性の高いIP解析を施行した。前述のIP解析方法に従い、下記のphenotype抗体を固着させた解析キットにより、赤血球除去した対象者の血液検体を15分間静置し、洗浄後に接着した白血球数を評価した。Phenotype抗体:CD4/8/11c/16b/25/36/66b/68/123/127/161,TLR-2/4,CCR-2/4/5,CXCR-3,CRTh2(全18種類)。健常人5人および熱傷および外傷患者10人に対して、本法によるIP解析を計22回施行した。全18種類の白血球phenotypeは、健常成人と同様に外傷・熱傷患者においても、迅速・簡便に解析可能であった。アレイ上に接着した白血球に関して、接着の有無を定性的に直視下で評価することは可能であったが、接着した白血球数の定量的評価を行うためには顕微鏡的評価が必須であった。本解析方法は、臨床患者におけるハイスループットなIP解析(網羅的解析)へ応用できることから、今後さらなる網羅的IP解析の集積により、感染症を契機とした多臓器不全の予知にも有用となる可能性が示唆された。
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