研究概要 |
顎関節の滑膜表層細胞はA型細胞とB型細胞の2種類に大別される.B型細胞の形態は多様であり,多彩な機能をもつことが推測されるものの,それらをすべてB型細胞と総称しており,その由来さえ明らかでない.顎関節疾患の病態を知る上で,B型細胞の形態学的特徴を明確にし,生物学的分類を確立することは必須の課題である.これまでの研究成果を基に,本研究では筋特異的分子に着目して,正常なラット顎関節滑膜のB型細胞における,それらの局在を免疫細胞化学的手法にて検索した結果,以下の所見を得た. 筋分化初期段階に発現するデスミンの免疫陽性反応が表層細胞に認められ,微細構造学的観察およびHsp25抗体との二重免疫染色によってB型細胞の一部であることが明らかになった.収縮に関与する平滑筋アクチンや,カルデスモンには微弱な反応を示す一方で,デスミン以降の筋分化を促す調節因子(myogenin, MyoD)は陰性であった.またこれまでにB型細胞に発現すること報告したカベオリン-3は,デスミン陽性細胞の一部に共存していた.さらにデスミンは筋特異的な中間系フィラメント構築タンパクでもあるため,他の中間系フィラメントのビメンチン,ネスチンの局在を検索したところ,デスミン陽性細胞のほとんどはビメンチン陽性であったが,ネスチンとは共存しなかった.デスミン陽性細胞の近傍には,微小な毛細血管が存在することが多く,上記のような免疫細胞化学的特徴は血管新生時に出現する活性化した周皮細胞に類似していた.この点について次年度に更なる検討を進める予定である.
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