エストロゲンによる骨代謝と幹細胞ニッチの制御機構を明らかにするために、エストロゲン(E2)単回投与による雄ウズラの骨髄骨形成モデルを用いて、以下の実験を行った。 1) E2投与後、大腿骨を採取し、OPG/RANKL/RANKの関係を検討した。骨内膜細胞と骨髄骨表面に存在する骨芽細胞のRANKLの発現量に差は認められなかったが、OPGは投与後2日に高い発現量を示した。骨髄細胞のみのRANKLおよびOPGの発現量に顕著な差はなかったが、大腿骨ではOPGは投与後1日、RANKLは3日、RANKは0日と2日で高い発現を示した。免疫組織学的に検討した結果、RANKLとOPG陽性細胞はいずれも骨髄細胞と骨芽細胞に認められ、これらの細胞は破骨細胞周辺に存在した。RANK陽性細胞はE2投与後、骨髄中で減少したが、TRAP陽性細胞の出現とともに骨髄骨周辺に認められ、破骨細胞も陽性反応を示した。以上の結果から、骨髄骨リモデリングは、哺乳動物と同様にOPG/RANKL/RANKシステムにより破骨細胞の分化が制御されていることが示唆された。 2) 骨髄内の造血系幹細胞の増減をCFU-assayにて検討した。投与後3日で最も多くのコロニーが形成された。この結果から、E2刺激は造血系幹細胞の分化を促すと推察された。 3) ニッチ細胞としての骨芽細胞および造血幹細胞の局在を明確にするため、N-カドヘリン(N-Cad)について検討した。骨内膜細胞と骨芽細胞のN-Cadの発現量に顕著な差はなかったが、投与後1日の骨髄細胞で高い発現を示した。また、免疫組織学的に検討した結果、骨内膜細胞と骨髄骨表面に存在する骨芽細胞は腸性を示し、その周辺に存在する骨髄細胞に陽性反応が認められた。 以上の結果から、骨髄骨リモデリングにおける破骨細胞の分化はOPG/RANKL/RANKシステムにより制御されていることが伺えた。また骨髄骨形成が進むにつれ、骨髄の細胞集団が変動し、破骨細胞前駆細胞が増加すると推察された。さらに、骨髄骨の骨芽細胞は造血系幹細胞のニッチ細胞として機能している可能性が示唆された。
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