研究概要 |
Pophyromonas gingivalisは代表的な歯周病原細菌であり、多くの病原因子を分泌する。なかでもプロテアーゼであるジンジパインは自身も病原因子となるだけでなく、本菌の病原因子の成熟化にも関わる重要な因子である。他の多くの病原細菌でタンパク質分泌装置が病原性の発揮に重要な役割を果たすことから、P.gingivalisの病原性の制御を目的としてジンジパイン分泌装置の探索にのりだした。本研究の目的はジンジパイン分泌装置に関わる分子の同定と機能解析である。P.gingivalisの近縁細菌との遺伝子比較および遺伝学的解析から、ジンジパイン分泌に関わる分子を明らかにし、Por secretion system (PorSS)と命名した。このPorSSは7タイプに分類される既知の細菌の分泌装置とは相同性をみない新奇の分泌機構であり、PorSS関連分子は(1)膜タンパク質と(2)遺伝子制御の分子に相同性をもつタンパク質の2つに分類された。(1)PorSSの膜タンパク質の多くは外膜に局在し、特に、Blue-Native PAGE解析からPorK,PorL,PorM,PorN膜タンパク質は複合体を形成して機能していることが示唆された。(2)細菌の二成分制御系のレスポンスレギュレータおよびセンサーキネースに相同性をもつ、それぞれPorXおよびPorYタンパク質は、マイクロアレイ解析、Q-PCR解析からPorSSの膜タンパク質をコードするporT porUおよびporK-Nクラスターの遺伝子発現を正に制御していることが明らかとなった。また、P.gingivalisと同じBacteroidetes phylumに属する滑走運動菌Flavobacterium johnsoniaeはPorK,PorL,PorM,PorNのオーソログをもち、これらの分子はF.johnsoniaeにおいてもキチナーゼタンパク質および滑走運動関連分子のタンパク質分泌に関わっていることが示唆された。PorSSはBacteroides phylumに属する菌に見られるシステムであり、この分泌装置の制御はBacteroides phylumに属する他の病原細菌の制御にも応用できるものと考えられる。
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