Actinomyces viscosusは歯肉縁下プラークや根面う蝕の部位から高頻度に分離されるグラム陽性桿菌であり、歯周組織における炎症の進行に関与すると考えられているが、その詳細な分子機構については不明な点が多い。また、宿主細胞の自然免疫系は、Toll-like receptor 2(TLR2)によって細菌由来リポタンパク質(LP)を認識することが示唆されているが、LPの病因論的役割は不明な点が多い。そこで本研究では、A.viscosusのLPにTLR2依存的な炎症誘導活性が存在するかどうか解明することを目的とした。A.viscosusはATCC19246株を使用し、菌体ならびに菌体から抽出したLPの炎症誘導活性を検討した。その結果、A.viscosusの菌体は、ヒト歯肉上皮細胞HSC-2ならびにphorbol 12-myristate 13-acetate (PMA)でマクロファージ様に分化させたヒト単球系細胞THP-1(THP-1/PMA)においてIL-8ならびにTNF-αの産生を誘導し、TLR2遺伝子を導入したHEK293細胞において転写因子NF-κBを活性化した。また、菌体抽出LPによる刺激も菌体刺激と同様な結果を示した。しかし、TLR2中和抗体の存在下で細胞を刺激すると、上記の活性が有意に阻害された。さらに、菌体抽出LPはリポプロテインリパーゼ処理によって完全に活性を失った。以上の結果から、A.viscosusの菌体由来リポタンパク質が宿主細胞のTLR2を介して炎症応答を誘導するという分子機構が示唆された。これらの成果は、平成22年7月3日に開催された第30回昭和歯学会総会にて報告した。
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