口腔癌の病態進展機構を時計遺伝子をも考慮した新しい概念を見出すことにより、新たな分子標的の確立を目指す。これまでに時計遺伝子DECの機能と口腔癌における細胞周期調節機構(CyclinD1)の相互作用の重要性についての評価を行い、以下の結果を得た。正常組織及び白板症では、CyclinD1は基底層に高発現し、DECは棘細胞層や顆粒細胞層に発現した。また癌組織では、CyclinD1の発現は増殖先端部では高発現を示す細胞が散見された。DECは増殖部では低酸素領域で高発現を示した。次にluciferase assayでDEC強制発現によるCyclinD1転写制御機構の解析を行つた。PromoterはE-boxを含む約1.9kbpのCyclinD1 promoterを使用した。CyclinD1転写活性が約4倍抑制され、その抑制された活性はDEC発現plasmidを濃度依存的に強制発現しても抑制がみられた。またCyclinD1遺伝子上流のE-boxにmutationを作製し、luciferase assayでDEC強制発現によっても、CyclinD1転写活性は影響を受けなかった。さらに、Chromatin immunoprecipitation (ChIP assay)を用いてDECがCyclinD1のE-boxに影響を及ぼすか調べた。コントロールと比べ、DEC強制発現によりCyclinD1のprecipitateする量が増加した。これらの結果よりDECがE-boxを介してCyclinD1の発現を制御していることが示唆された。
|