破骨細胞は、RNAKLの刺激を受けて分化・成熟するが、細菌由来成分に対する免疫反応でも分化誘導される。我々はToll like Receptor(TLR)4は、マクロファージにおいてRNAKL存在下でLPS刺激により破骨細胞分化を誘導するが、TLR2では、RNAKL非依存的にPam3刺激のみで破骨細胞を誘導することを見出した。両受容体ともMyD88を介したシグナル伝達系の活性化が破骨細胞誘導に関与しているが、TLR4にはTRIF/TRAM経路が併存し、活性化されると破骨細胞分化抑制因子となるインターフェロン(IFN)βが産生される。そこで、TLR2とTLR4を介した破骨細胞誘導能の違いはTRIF/TRAM経路の存在にあると仮説を立て、引き続き検証実験を行った。 破骨細胞の前駆細胞の性質を有するRAW細胞を用い、TRIF/TRAM経路で活性化されるIRF3またはIRF7遺伝子を標的にknockdown細胞を作製した。各細胞をRNAKLで刺激すると破骨細胞に分化したが、LPSまたはPam3のみで刺激した場合、Pam3では単核の破骨細胞様細胞が誘導され、LPSでは変化が認められなかった。マーカー遺伝子の発現を調べた結果、分化に必須の転写因子c-fosがLPS、Pam3刺激共に発現上昇していることが分かった、しかし、LPS刺激によるIFN-βの発現は、コントロール群に比べ低下したが、knockdown細胞でも確認された。次に、TRIF阻害剤を用い、TRIF/TRAM経路の阻害を試みた。破骨細胞誘導実験においてLPSまたはPam3のみで刺激した結果、knockdown細胞と同様に、LPSでは変化が認められなかった。また、マーカー遺伝子の発現を調べた結果、LPSはPam3刺激と同じくc-fosの発現が確認できたが、酒石酸耐性酸ホスファターゼ(TRAP)の発現亢進は確認できなかった。TRIF/TRAM経路の阻害においても、LPS刺激で著しい破骨細胞誘導効果は確認できないが、c-fos遺伝子の発現が上昇することから、LPS刺激のみでも破骨細胞分化へ方向付ける刺激が与えられていると考えられる。TLR4とTLR2の刺激による破骨細胞分化の違いはTRIF/TRAM経路から誘導されるIFN-βの影響が強い可能性を考えていたが、確骨細胞誘導を途中で遮断する他の要因の存在が示唆された。
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