研究概要 |
本研究は,超高磁場磁気共鳴画像法(MRI)を用いて小動物の機能的MRI(fMRI)の味覚中枢研究モデルを確立し,味覚中枢情報処理機構を明らかにすることを目的としている.平成21年度は,fMRIによる味覚中枢研究モデルの確立を試みた.使用する超高磁場MRIは,測定対象であるラットを入れる磁石の口径が小さく,実験に使える空間が限られている.そのため,口腔内にある味溶液を洗浄し,また洗浄水を舌上から除く方法を工夫した.これらの方法により,繰り返しの味溶液刺激に対し,大脳皮質味覚野において再現性のあるfMRI信号の取得に成功した.ウレタン麻酔下のラットに対して,甘味溶液(スクロース;0.5M)を用いて刺激を行ったところ,片側あるいは両側の大脳皮質味覚野(ブレグマから鼻先に0.5~1.5mmの領域)でfMRI信号が得られた.片側味覚野の応答は,本手法のSNの問題を考慮しても,少なくとも非対称であると考えられる.また,本研究モデルでは大脳皮質味覚野の応答だけでなく,主に口腔領域の体性感覚野,2次体性感覚野,帯状皮質,線状体,側坐核,内包に信号が見られた.これまでの研究手法では,ある領域だけの応答を測定しているが,fMRIによる研究モデルを使用することにより,複数の領域での応答と味覚野の応答を比較検討することで新たな知見が得られる可能性がある.現在,異なる濃度と異なる味溶液を用いて,fMRIにより味覚中枢応答を測定し,その応答の解析・検討を行っている.
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