1. 三叉神経中脳路核(MTN)および三叉神経運動核(TMN)を同時に含むラット脳幹スライス標本を作成し、膜電位感受性色素RH414を負荷した上で、TMNの背内側部に置いた刺激電極で100Hz、10発の連続微小刺激を与え、TMNニューロンプールの興奮を光学的に測定した。連続する刺激列の後ろへ行く程、TMN背外側部閉口筋運動ニューロンプールに観察される応答(光学信号)の領域は大きくなり、最終的にはTMN背外側部全体にわたった。このことから、MTNからの興奮性入力は閉口筋運動ニューロンプール全体を支配し、閉口筋運動ニューロンの動員はIa入力の時間的加重によって引き起こされる可能性が示唆された。2. TASK型漏洩K^+チャネルを制御する8-Br-cGMPに対するTMNニューロンプールの興奮を光学的に測定した。8-Br-cGMPを灌流投与すると、TMNの背内側部の連続刺激によって引き起こされた閉口筋運動ニューロンプールの興奮強度は増大し、興奮がTMN背外側部全体に拡がるまでの時間は短縮した。このことから、NO-cGMP-PKG系の活性化によってTASKチャネルが制御されることで細胞の入力抵抗が変化し、運動ニューロンの動員様式が修飾される可能性が示唆された。 3. 一定速度で増減するランプ負荷に対抗することにより生じる咬筋の等尺性収縮運動中に、咬筋に振動刺激を与えてIa線維の活動を変調した時の咬筋筋活動を測定した。咬筋に振動刺激を与えると、負荷の増加に伴い咬筋筋活動が不規則に増加し、単位負荷あたりの筋電図RMSの増加量が有意に高い値を示した。また、負荷の減少に伴い咬筋筋活動量の解除が遅延し、負荷をゼロにしても咬筋筋活動が持続した。これらのことから、咬筋の等尺性収縮運動(噛みしめ運動)の遂行には、筋紡錘の活動が決定的な役割を果たすことが示唆された。
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