研究課題
本年度は、昨年度に引き続き,ヒトにおいて、下顎に単調増加する負荷を与え、サイズの原理に従った運動単位の動員を実現し、咬筋の等尺性収縮時に歯根膜及び筋紡錘一次感覚入力が運動単位の序列動員機構を修飾しうるか否かを検討した。昨年度の研究から、振動刺激を咬筋に与えた場合、対照群と比較して、負荷の増加に伴い筋活動及び咬合力が不規則に増加し、単位負荷当りの咬筋の二乗平均平方根値(RMS)、つまり、負荷-RMS関係の近似直線の傾きは有意に大きい値を示した。また、負荷の減少に伴い筋活動は減少したが、振動刺激が与えられている場合には、負荷をゼロにしても筋活動が持続した。また、負荷-RMS関係の近似直線の傾きは、被験者間で大きく異なり、振動刺激の影響も、被験者によりばらつきが認められた。統計解析の結果、噛みしめ運動が効率よくおこなえない被験者の方が、振動刺激の影響が少なく、噛みしめ運動学習をよく習得している被験者ほど、振動刺激の影響が大きいことが明らかとなった。このことは、幼少期における「噛みしめ」運動学習の過程で、筋紡錘感覚と歯根膜感覚を初めとする他の感覚との関連付けが小脳で行なわれ運動学習が成立した可能性を示唆している。従って、こうした個人差は被験者間の食習慣の差異に起因する可能性が高い。そこで、チューインガムによる噛みしめ運動への影響を調べた。チューウインガム咀嚼を3~5分間おこなった直後に負荷実験を行なうと、期待に反して、噛みしめ運動学習をよく習得している被験者に対しては、振動刺激と同様の効果をもつことが明らかとなった。しかしながら、これは、実験装置により引き起こされた受動的等尺性収縮運動の調節と、チューウインガム咀嚼のような能動的等尺性収縮運動の調節の切り替えに伴う錯覚現象によるものと理解され、極めて重要な所見であると考えられる。
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The Journal of Neuroscience.
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http://www.dent.osaka-u.ac.jp/graduate/course/phys.html
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