唾液腺に発現する水チャネル・アクアポリン5(AQP5)は、副交感神経依存的に細胞膜へ動員され、唾液分泌の促進に重要である。本研究では、翻訳後修飾がAQP5の機能発現に与える影響を、とくに細胞内輸送に着目して解析を行っている。本年度はAQP5の特にユビキチン(Ub)化の細胞内輸送への関与と、リン酸化の有無を調べた。 <Ub化の解析>マウス唾液腺やヒト唾液腺由来(HSG)細胞における解析から、AQP5の短鎖Ub化はカルシウムシグナルの下流において一過的に誘導されること、また、この修飾はAQP5C末端領域のリシンで起こることを見出した。このAQP5Ub化の役割を調べるために、非Ub化AQP5と野生型AQP5発現細胞において比較実験・解析したが、エンドサイトーシスやライソソーム系分解への関与を示す明瞭な結果は得られなかった。これはAQP5のUb化が微量で且つ一過的な反応であるからかも知れない。他の輸送段階における関与を調べると共に、Ub融合AQP5を用いた解析や、薬理学的に脱Ub化阻害での挙動を見るなど、実験系を改新する必要がある。 <リン酸化の解析>リン酸化モチーフ特異的抗体を使用し、実際にマウス組織や培養細胞系でリン酸化することを確認した。また、変異体の解析からリン酸化部位の同定も行った。 上記2つの可逆的な翻訳後修飾は、AQP5の細胞内輸送を含む発現調節機構のキーとなるシグナルであることは間違いなく、次年度以降で本研究を完遂することにより、唾液水分泌の分子機構の解明に大きく役立つことは必至である。
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