本研究では申請者の所属する研究室で発見された新規分子PRIPを欠失したマウスにおいて種々の組織からの様々な物質の分泌亢進を認めたことから、PRIPが開口分泌において分泌過程のどこに作用するのかを明らかにする。具体的には複数の機能ドメインからなるPRIPの各ドメインについて開口分泌の分子機構における役割の有無を明確にすることに主眼を置いている。 初年度の平成21年度は本研究に必要なPRIPその他の開口分泌関連分子について遺伝子組換えコンストラクトの調製すなわち蛍光あるいは精製用のタグを繋いだ大腸菌や培養細胞への発現コンストラクトを作成した。引き続きPRIPを内在性に発現していないPC12細胞に種々のPRIPやその部分欠失変異体、点変異導入体を安定的に発現する細胞株のスクリーニングを開始し、いくつかのクローンを得た。また大腸菌発現系にて精製した各変異体も順次調整しており、これらの細胞及びタンパク質を用いて試験管内アッセイとセミインタクト細胞による実験を開始する準備がほぼ整った。また、開口分泌のモデル細胞としてのPC12細胞を用いた生化学的アッセイのうち、予め[^3H]ノルアドレナリン(NA)標識したPC12細胞をサポニンあるいはジギトニンで漏出化し[^3H]NA放出を測定するための実験条件等を詳細に検討し、系の確立を行い報告した。 本研究の結果はPRIP欠失マウスの各組織で認めた開口分泌の亢進現象の詳細な分子機構解明につながる。このことは普遍的かつ重要な細胞機能の一つである開口分泌の調節機構における新しい分子の存在と役割を認知させるという学術的意義を持つ。
|