本研究の目的は生きた動物(in vivo)における唾液腺細胞のCa^<2+>応答とそれに関係する分子(イノシトール三リン酸(IP_3)あるいはプロテインキナーゼ(PLC))の動態をリアルタイムで可視化し、それらと唾液分泌反応との関連を明らかにすることである。 平成21年度は、in vivoでの実験に先駆け、ラットから摘出した顎下腺標本(スライスまたは顎下腺全体)のCa^<2+>応答の測定と、IP_3濃度を測定するIP_3バイオセンサーLIBRAvの改良とLIBRAvを発現するウイルスベクターの作成を行った。 ラットより摘出した顎下腺にCa^<2+>蛍光指示薬fura-2/AMを注射し、顎下腺組織にfura-2を負荷した。Fura-2を負荷した顎下腺をムスカリン受容体作動薬であるカルバコールで刺激したところ、fura-2の負荷された顎下腺表面におけるCa^<2+>上昇反応を観察した。 LIBRAv発現ウイルスベクターの作成するため、LIBRAvとIP_3との感受性を向上することを目的としLIBRAvのリガンド結合部位を改変した。最終的にウイルスベクター作成用のLIBRAvプラスミドのシークエンスを行い新型のLIBRAv発現プラスミドを作成した。この発現プラスミドによって発現した新型LIBRAvの反応性を調べたとところ、新型LIBRAvはオリジナルと比べ、IP_3に対する感受性が2倍以上向上していたことを見出した。この新型LIBRAv発現プラスミドを用いて、新型LIBRAv発現ウイルスベクターを作成した。培養細胞を用いた実験により、このウイルスベクターによりLIBRAvタンパク質が発現することを確かめ、そのタンパク質がIP_3にバイオセンサーとして機能することを確認した。
|