研究課題
今までに、DC-STAMP欠損マウスでは破骨細胞の細胞融合が完全に欠失し、それに伴う骨吸収能の低下により、骨量の増加をきたすことが明らかとなっている。逆に、DC-STAMP過剰発現マウスでは破骨細胞の細胞融合の有為な亢進および骨吸収能の上昇を認める事を既に見出している。平成22年度の結果により、骨代謝制御に関しては、in vivoでの骨密度の測定、骨形態計測、骨吸収アッセイを行いDC-STAMP欠損マウスでは、破骨細胞による骨吸収が抑制されているが、骨芽細胞による骨形成は促進されており、その結果骨量は増加していた。それに対しDC-STAMP過剰発現マウスでは、破骨細胞による骨吸収の亢進、および骨芽細胞の活性と骨量の低下を示した。DC-STAMPは破骨細胞特異的に骨量を制御し、またDC-STAMPの機能を抑制する事で、破骨細胞による骨吸収抑制と骨芽細胞の活性上昇の両面から、骨量を増加させることが可能となる事が示唆された。そこで今年度は骨量を増加させる因子としてTGF-βに着目し、解析をおこなった。TGF-βは破骨細胞の分化を抑制し、骨吸収を抑制することを明らかにすることができた。TGF-βは骨基質内では潜在型のTGF-βとして存在し、活性化には破骨細胞由来の強酸が必要であることは既に知られている。これらの解析により新たな生理的な骨代謝を利用した骨量増加の可能性が示唆された。次に、DC-STAMPの過剰発現だけで破骨細胞の多核化が起こるのか、in vitroにおいてDC-STAMP過剰発現細胞をM-CSF単独での培養をおこなったが、細胞融合は認められなかった。このことからDC-STAMP以外に細胞融合を制御する新たな分子が必要であることが明らかとなった。
すべて 2010
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The Journal of Experimental Medicine
巻: 204 ページ: 751-762