研究概要 |
誰もが日常的に行える「咀嚼」が認知機能を改善する脳内のメカニズムを解明し,超高齢化社会を迎えた我が国の認知症予防策として活用するために,ヒト脳マルチモダリティ計測によって脳内情報伝達経路を可視化する手法を検討した。 研究二年目の本年は,前年度に計測が完了した短期記憶課題遂行時のMEGデータからの(1)Adaptive Beamformer法による脳内神経活動の時空間変化の抽出(2)SPM解析による活動部位のブロードマンエリア同定に加え,新たに(3)光トポグラフィ装置による脳血流量変化のガムチューイングによる効果の検討を行った。MEGデータ解析から,言語課題による記憶活動を行っているときには,前頭連合野,運動前野,縁上回などの皮質部位が80%以上の高い時間相関を持って協調活動していることが明らかになった。これらは言語情報処理における「中央実行系」,「リハーサルプロセス」,「短期記憶」にそれぞれ関連していることが示唆される。さらに,光トポグラフィで同様の実験を行った結果,中央実行系にあたる前頭連合野のOxy-Hb増加量がガムチューイングにより増大することが明らかになり,昨年度のMEG研究で示された咀嚼による中央実行系の活動促進を裏付ける結果が得られた。これらの成果はJournal of Oral Rehabilitation,Journal of Prosthodontic Researchなど歯科医学系の国際雑誌へ発表したほか,脳神経科学関連の内外学会にて口演・ポスター発表した。
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