2008年度にM-CSF受容体の第2のリガンドIL-34が発見された。本研究は、「細胞周期が停止した破骨細胞前駆細胞QOPの形成にIL-34が関与している」、という仮説をもとにQOPの誕生および骨組織への供給のメカニズムを解明することを目的とする。平成21年度は、IL-34の生理作用を明確にするため、次の1.~3.の実験を計画した。1.op/opマウスを用いて、脾臓でのIL-34発現が活性型ビタミンD_3による破骨細胞形成に関与しているかについて検討する。次いで、2.op/opマウスの加齢による破骨細胞の出現への、IL-34の関与について検討する。さらに3.脾臓におけるIL-34発現細胞の同定を行う。本年度は順調に当初の計画通り進行し、以下に項目ごとの成果を記す。(1)op/opマウスに活性型ビタミンD_3を投与すると、脾臓においてIL-34誘導後にM-CSF受容体^+陽性細胞とQOPである可能性がある単核のTRAP弱陽性かつRANK陽性細胞誘導が観察された。さらに、op/opマウスに脾臓摘出を施すと、活性型ビタミンD_3による破骨細胞誘導が認められなかったことから、脾臓のIL-34発現が活性型ビタミンD_3による破骨細胞形成に関与していることが示唆された。(2)op/opマウスおよび野生型マウスの骨と脾臓の双方において、加齢に伴いIL-34発現レベルの著しい上昇を認めた。したがって加齢に伴う破骨細胞数上昇へのIL-34の関与が示唆された。(3)IL-34は、脾臓において血管内皮細胞特異的に発現しており、活性型ビタミンD_3投与により発現レベルが上昇した。以上、本年度は破骨細胞前駆細胞(QOP)の誕生および骨組織への供給にIL-34が関与していることを明確に示すことが出来た。
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