我々は、Wnt10aというサイトカインが破骨細胞に発現していること、骨芽細胞にWnt10aを過剰発現させるとアルカリホスファターゼ活性が亢進することを見いだした。本研究は、破骨細胞が分泌するWnt10aが骨芽細胞の骨形成活性を亢進するかを明らかにすることを目的とする。 平成21年度における成果は、以下の通り。 1.破骨細胞から分泌されるWnt10aが骨芽細胞のアルカリホスファターゼ(ALP)活性を誘導するか、in vitroで検討した。スポットカルチャーした破骨細胞と骨芽細胞様ライン化細胞であるST2細胞の共存培養を行った。ST2細胞は、通常の密度(24ウェルプレートに2×10^5cells/well)で培養した場合、アルカリホスファターゼ活性陰性であるので、破骨細胞によるALP活性誘導を観察するのに適していると考えていたが、通常の密度では、破骨細胞と共存培養してもALP活性が誘導されなかった。また、これ以上高密度でST2細胞を培養した場合、他に何の処理をせずとも、ST2細胞全体にALP活性が誘導された。破骨細胞の密度を上げれば、通常密度のST2細胞にALP活性を誘導できるかとも考えたが、その場合、ST2細胞の定着が悪くALP陰性であった。その他の培養条件も試したが、これまでのところ良好な結果は得られていない。現在、破骨細胞そのものではなく培養上清を用いた実験系を構築している。 2.Wnt10a受容体の探索、3.Wnt10a floxマウスの作製に関しては、1.の実験がうまくいっていないため、進めていない。
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