研究概要 |
動物が食物を摂取する際,味覚ならびに食物の硬さなどの体性感覚が口腔内に存在する受容器で受け取られる.これらの感覚情報は中枢に伝えられ,脳内で情報処理が行われることで食行動の調節に関与していると考えられている.経験的に,同じ味を呈する食物であっても硬さが異なると食行動に変化が生じることが知られており,味覚情報と硬さの情報が脳内で統合し処理されるメカニズムが存在することが予想されるが,詳細は不明である.そこで,本研究では飼料中の含有成分は同様で硬度の高い飼料(hard)および低い飼料(soft),さらにhardに3%ショ糖を添加した飼料(sweet)を作成し,これらの飼料摂取中に活性化する脳部位および当該部位でのヒスタミン遊離の挙動を調べた.まず,これらの飼料を摂取した際に活性化する脳部位について,Fos発現を神経活性のマーカーとした免疫組織化学染色にて検討した.その結果,hard群では扁桃体中心核のFos発現が顕著に増加していたが,soft群ならびにsweet群ではFos発現がやや減弱していた.さらに,飼料摂取中の扁桃体中心核におけるヒスタミン遊離について自由行動下のラットを用いたマイクロダイアリシス法を用いて検討したところ,hard群では有意なヒスタミン遊離の上昇が認められたが,soft群ではヒスタミン遊離に上昇は認められず,観察期間の最後でヒスタミン遊離の有意な低下が認められた.Sweet群ではヒスタミン遊離に有意な変化は見られなかった.以上の結果より,扁桃体中心核のヒスタミン神経系は摂取する食物の硬さや味覚によってその活性が変化することが示唆された.
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