研究概要 |
1.歯科用X線照射装置のESR信号に及ぼす影響 診断用デンタルX線を抜去歯に連続照射(5-100回)を行い、L-band ESR Spectrometerで検出される信号が発生するか検討した。同時にTLD素子(熱ルミネッセンス線量計)により線量測定を行った。照射回数に応じた線量で一回照射が、4.256±0.021mSvであった。抜去歯への5-10回の連続X線照射では、信号強度が0.029-0.056a.u±0.018であり、既存信号との分離評価は不可能であったが、50回から100回照射では、0.0985-0.1021a.u±0.0277であり、L-band ESR測定装置でも検出される信号が生成されることを確認した。歯科用X線撮影装置や医療被曝が既存EPR信号の発生に関与している可能性が考えられた。既存被曝信号の分離評価について十分に考慮されなければならない条件であることが確認された。 2.ESR信号を用いたスクリーニング法の分析 抜去天然歯を、(1)非曝露群(非照射群)と(2)曝露群で、50kVX線1Gyと2GyのX線照射を行ったもの)に分けて計測を行い、生成データの分布から、曝露群が正しく曝露ありと判定される確立(感度)と、非曝露群が正しく曝露なしと判定される確立(特異性)を、モンテカルロシュミレーション(Crystal ball ORACLE[○!R],R)で算出した。1Gy照射群では感度77%特異性78%だったが、2Gy照射群では感度99.9%、特異性99.8%であった。高線量被曝事故の際に、1-5Gyでの領域が測定できればトリアージとしての運用が可能となる。今回のデータから、L-band ESR Dosimeterによって一人あたり数分のスループットでマススクリーニングとして利用できうる可能性を示せた。
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